空はなぜ青いのか
じゃあ、と言って背中を向けて家に向かって歩き出す。
先ほど潜った方とは反対側の方の遮断機を潜ろうと身を屈めた、その時。







「ないです」








闇の中に響いた小さな声。
驚いて振り替えると、少女が先ほどの場所から一歩も動かず顔をうつ向かせている。



「家はありません」



「え・・・」
いきなりのことに驚いて、身を屈めた状態で固まってしまった。
「名前もありません」
うつ向いたままの彼女の声がだんだんはっきりして行く。
彼女が顔を上げてしっかりと俺と目をあわせる。
「だから、私をあなたの家に泊めていただけませんか?」
時間が止まった、ような気がした。
「は?」
「少しの間でいいんです!泊めてもらえるだけでいいんです!」
少女は未だに屈んだ状態でフリーズしてる俺に近づいて、胸の前で手を握りしめている。
「いや、ちょっと・・・」
「泊めていただいている間はお料理だって、お掃除だってします!」
必死に俺に頼み込む目の前の美少女の勢いについていけない。
「あ、お使い!お使いだってします!」
そんなにお使いって大事なことだっただろうか。
いや、問題はそこじゃないだろう。
「他にも何かできることがあったら私!」
「だから待てって!!」
俺の声に少女がビクリと震える。
「あ、えっと・・・別に怒ってるわけじゃなくて、とにかく落ち着けよ」
少女を安心させるように声を和らげる。
「あのさ、なんかわけがあるかもしれないけど、そうゆうのはまずいと思う」
「まずい・・・?」
少女は本当にわかっていない様子でこちらを見つめている。
普段は使わない頭をフル活動して適当な言葉を探す。
「だ、だから・・・えっと・・・俺は一人暮らしなんだ」
「そうなんですか」
だからどうした、と言うような顔で彼女はこちらを見つめ続ける。
「そういう・・・その、お、女が男の家に簡単に泊まるとか言うのはよくない・・・と思うんだ」「そうゆうものなんですか?」
「ああ」
「でも、私、簡単な気持ちでなんて言ってません」
何を言ってるんだこの女は。
「は?」
「本当に泊めていただきたいんです!ご迷惑なら少しの間とは言わず、一晩だけでもいいんです!」
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