更生は赤詰め草で
きっかけは路地裏で
子供がはしゃいで廊下を走り回る。
「ちょっと、待ちなさいよっ!」
追いかけっこだろうか、女の子数人が遊んでいる。
その数人とは別方向から一人、歩いてきている。
中学に入学して間もない彼らは小学生とさほど変わりはしない。
慣れた土地、慣れた友人の中に、少しの別れがあって、新たな出会いに胸を膨らませる。
遊んでいる者の一人が躓く。
大きくよろけて、転ぶまいと必死に近くの支えになりそうなものを掴む。
それでも堪えきれずに、掴んだものごと派手にすっころんだ。
中学に大きな違いといえば──たいした差もないくせに作られる、上下関係。
打ったところをさすりさすり、女の子は顔をあげて、相手の顔を見てはっとした。
周りの子たちの顔色もほのかに血の気がうせる。
ぶつかった相手、それは上下関係の恐怖の頂点に立つという絶対に手を出してはならない相手だった。
「ご、ごめんなさいっ!!」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく下級生を見て、ぶつかられた少女はため息をついた。
うわさの広まってしまった今、信用を取り戻し、イメージを変えていくにはまだまだかかりそうだ。
「おーい早苗ー!帰ろうぜー!」
後ろから少年の声がかかった。
少女は振り向き、大きく手を振って答えた。
「今いく!」