更生は赤詰め草で

「私は、前から…ユウジのこと好きだったよ」

「え…?」

ユウジは目を見張り、早苗を凝視した。

「由香がユウジに告白しようとしたときにね。すっごく嫌だって思ったの。
それで気づいたんだ。アタシが好きなのはユウジなんだって。

それからいろいろ思い出してみたら、アタシ、カレカノ演技のときもすごい楽しかったんだ」

早苗は、立ち止まって顔を上げた。
そしてまだびっくり顔の名残のあるユウジの顔をしっかりと見つめて──

「アタシと付き合ってください!今度は演技なんかじゃなくて、本気で!」

早苗は頭を下げた。

少しの沈黙。ユウジは口元でフッと笑った。

「俺も、よろしくお願いします!」

そういって、早苗の顔を手で包み、顔を上げさせ、小さい触れるだけのキスを唇に落とした。
早苗の顔が、耳まで真っ赤になる。

「──ッ!!そういうことは一言入れてからにしてよ!」

「ヘヘッ、こういう時じゃないと出来ないし!」

二人は顔を見合わせると、ニッと笑い、歩き出した。


今までと少し違うのは、繋いだ手が固いこと。
遠慮がないこと。 そして何より、お互いを信頼していることだった。




【完】

< 102 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop