更生は赤詰め草で
ユウジの脳内は軽いパニック状態になっていた。
出て行ったところまでは気持ちよく行動していたのだが、そこから先のことは全く考えていなかった。「どうする、どう逃げれば」その言葉ばかりが頭を回る。
もともと、頭の回転はいい方ではない。顔にこそ出てはいないけれども、胸中穏やかではなかった。
──だから出て行くなって言ったんだ。結局最悪のパターンだし
隣で様子を見ていたヒスイは、長年の付き合いのおかげでユウジの考えていることが手に取るようにわかり、呆れてため息をついた。
そして、ユウジと同じように考えをめぐらせはじめた。
倒れたままの早苗も、すこし危ない空気を読み取っていた。
いきなり出てきた二人に多少の期待をもった自分がバカだったと思い始めた。
体を起こして周りを見る。
全員の視線はユウジたちに向いているものの早苗が囲まれていることにかわりはない。
この時、三人の頭を廻る言葉はシンクロして─どうする・・だった。
「もういーいかーい」
間延びした言葉をリーダーの男が吐き出した。
──一か八か・・
「あんたら、此処での喧嘩は初めてか?」
口を開いたのはヒスイ。
「ああ、俺たちの獲物が最近は帰りのコースをコロコロ変えていくから、さ。面倒だけどちゃんと遊びたいだろ?だからこうして健気についていってんのさ。」
ヒスイの口端が、わずかに上がった。
「そうか・・それじゃあ、今回は残念だったなあんたら」
「どういう意味だ?」
リーダーの男は表情を変えず、でも片眉がピクリと反応した。