更生は赤詰め草で
「ここの通りはよく運動部のロードワークのコースになるんだよ。」
「・・・」
「で、たいがい先生がついて走るなんて事はないけど、うちの中学、陸上部が特別に熱心で。
おまけに先生はとてつもなく時間に厳しくてどのメニューをどのくらいの時間でやるかも分単位で決めてるんだとよ。一人ひとりの指導もしたいからロードワークにもついて来る。
そこで問題だ。俺がこのことを言ったのは何故でしょう?」
男たちは黙っている。
ヒスイの意図が読み取れないことと、なんとなくな嫌な予感が漂い、顔を見合わせた。
ヒスイは腕時計をチラと見やった。
「GAME OVER」
ヒスイの言葉に、場が緊張し、静まる。すると遠くの方から規則正しい多くの足音と、何かを叫ぶ男性の声が聞こえてきた。
「! そうか!」
ユウジも察し、彼らに発破をかける。
「ほらほら、早く逃げないとこの現場に陸上部とその顧問が駆けつけて来ちゃうぜ?」
「クッソ!お前ら散れ!さっさと逃げろ!」
リーダーはそれだけ言うと足音の聞こえるほうと逆に逃げた。
ヒスイのそばを通るとき、ヒスイがフラッとよろけリーダーの男にぶつかった。
「ああ、失礼」
リーダーはヒスイを鋭い目つきで一瞥すると何も言わずに走り去った。
手下のものたちもバラバラと立ち去り、誰もいなくなった頃に陸上部が駆けていった。
その後ろを自転車で走っていた顧問は通りがかりざま三人を怪訝そうに見つめ、「お前ら早く帰れよ」と言って過ぎ去った。
「大丈夫かお前!」
誰もいなくなってからユウジは早苗に駆け寄った。
安心して力が抜けた早苗は、立つことすらも気だるい気分だった。