更生は赤詰め草で
「…いじめか…」
早苗はひたすらに上履きの埃を払っていた。
「誰だよ?」
「知らない」
「そりゃ、そうか…」
早苗のそっけない答えにヒスイは頬をかく。
「大丈夫か?」
「……知らない」
ヒスイはどうしていいかわからずそのまま立っていた。
いい加減、上履きの埃がこれ以上取れないとわかった早苗はそのまま歩きだした。
だが、踏み出すことは出来なかった。
「何?」
早苗に問いかけられて初めてヒスイは、自分が早苗の腕を掴んでいたことに気付いた。
「あ、いや…なんつーか…」
何かを言うべきだ。しかし言うべき言葉は見つからない。
暫く狼狽えたすえに短く紡ぎだした。
「無理すんな。辛いなら、言え。ユウジもいる」
ヒスイを一瞥すると、早苗は無言で歩き出した。
今度はなんの抵抗もなく、でも腕はほんのり暖かかった。