更生は赤詰め草で

その仕草が逆の意味にとられたようだ。

チンピラのニヤニヤ笑いが更に大きくなり、男性は少し挙動不審な動きを見せていた。

はじめの慰謝料の話はどこへやら。

もうネタが無いのか普通にカツアゲをしてくるチンピラに早苗は心を決めた。

──もう、ここまできたら此れが原因で道場追い出されることも無いよね

出来るだけ予備動作を小さくし、右腕を振るった。

「「え?」」

早苗とチンピラが同時に声をあげた。

早苗の拳はチンピラに届くことなく自分の頭より少し高いところでぶつかった男性に止められ、男性はそのまま早苗の腕を強く引き、走り出した。

「え、わっちょ、ちょっと!!」

突然のことに転びそうになりながら早苗は男性にされるがまま駅前の人ごみの中に消えていった。


路地に取り残されたチンピラはその場にかがんだ。

「あーあ、王子様に取られてやんの。」

後ろに待機していたうちの一人が冷やかしたのを合図に他のメンバーからもからかいの野次が飛ぶ。
立ち上がったチンピラの手には、あるものが握られていた。

「いいや、まだまだこれからさ」

それは、中学校の生徒手帳。
無論、里山早苗という少女の。



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