更生は赤詰め草で

「んなことされなくとも黙っとくっつーの!」

そういって上の岡田をにらみ、ブスッと押し黙る早苗。
そんな彼女をせせら笑った後、由香は今度こそちゃんとユウジに向き合った。

「あのね、私──」

「キミタチッ!!そこで何してる!!」

またしても邪魔が入った。
苛立ちを隠しもせず、ひどい形相で由香が振り返る。
と、その先を見た瞬間に彼女は白目を剥いてぱったりと倒れた。

「お、おい!?」

由香をあわてて支えるユウジ。
その時、工場の表側がガヤガヤと騒がしくなる。

「なんだ?」

銘々騒ぎの元を探ろうと首を伸ばす。
その時、表から不良の一人が走ってきて叫んだ。

「ヤバイ!!サツだッ!」

不良の一味は蜂の巣をつついたように騒ぎだした。

「逃げろ!」「つかまってナンボだぶちのめせ!」「何言ってる」

「てめーら黙れ!」

岡田が一喝すると不良たちは即座に黙る。
彼は立ち上がって、一つ息を吐くと言った。

「ズラかるぞッ!」

「「おおッ!」」

行動が決まった途端に一糸乱れぬ動きで逃げ出し始める不良。
ホコリを落として立ち上がりながら、呆れ顔で早苗がつぶやいた。

「おい、誰かぶちのめせ言ってなかったか?」

「ま、いんじゃね?」

軽い調子でユウジが返す。
そして、どちらからともなくニッと笑った。

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