更生は赤詰め草で

「あ、そうだ。早苗ちゃん」

葵に呼ばれて早苗は振り向く。
葵は例の手帳から一枚の写真を取り出して早苗に渡した。

「これは…?」

写真をみて早苗は思わず吹き出した。

そこには顔が煤だらけになって不機嫌に写る男の子がいた。
素晴らしいことに、頭がアフロになっている。
若干の見覚えのあるこの顔は――

「高一の岡田タカシ。調理実習で失敗して鍋が爆発したんだって」

「なんでこんな―?」

驚く早苗に、葵は小首を傾げて笑った。

「情報ピックアップするって言って間に合わなかったお詫びと、ビビり顔撮られたお返しになればってね」

「ありがとうございます」

写真を受け取り、早苗は心に決めた。

何でこんな写真を持っているのか、そんな野暮な質問はやめておこうということ。

そして、これから先綾杉姉妹に逆らうことも。

「あ、それはそうとヒスイ!」

葵が声をかけると、ヒスイは気のない顔を上げた。

「母さんに何も言わず出てきたでしょ?多分、だいぶ怒ってるよ」

< 99 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop