小さな塊
「名前!聞くの忘れてたんすけどー!!!」


アキラが叫んだ


レイは大きな声で答えるのが恥ずかしかった
少し戸惑ってから



「かみや………でーす」



アキラは眉間にシワを寄せ言った

「はぁ~い?聞こえませんけどー!!!」



レイは小さなため息をつき、少し多めに息を吸って答えた



「…か・み・や・ですぅーーー!!」



「はーぁ?ごめーん!もーいっかいおねがーい!」



もう二度とと答えたくなかった
この一回で絶対キメてやるという思いで、レイはたくさんの息を吸い勢いよく叫んだ



「かーーみーーやーーでーーーーす!!!!」



反射するものが何もない海に、レイの声は吸い込まれた

するとアキラは下を向きプッと吹き出して、顔をあげまたニカッと笑った


「普通さぁ、下の名前いうことね?」



アキラが普通に喋った声は十分レイに聞こえた



やられたー………………



変なヤツ変なヤツ変なヤツ!!!



それでもレイの心の中に普通のナンパをされた後のような嫌な気持ちは残っていなかった。



それは、レイのお気に入りのプライベートビーチの空気がそうさせてくれたのか、それとも自分にはないアキラの笑顔がそうさせてくれたのか…………………


「まぁとりあえず、連絡待ってるよーかみやさん!」


アキラは後ろ姿で手を少し上にあげ、またヒラヒラ手を振って今度は本当に光の中へ消えて行った
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