あなたの大切なもの

愛する人

「ガハッ―――」

刹那の口から赤黒い血が出た。
あたしは足が地面にくっついたかのように、その場に立ち尽くしている。

「百合っ! 何してん――!? 小城!? 利恭!! あんた――」

綾女も光景を目の当たりにしたようだ。

「俺の…俺のせいやない! 遠野さんが…俺を好きになってくれんから! 小城…お前が居るから俺は―――!!」

「黙れ!」

あたしは今までに出したことのないような声を出した。
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