あなたの大切なもの
刹那を突き刺したナイフは、お腹らへんにまだついていて、刹那の命を狩りにきた死神に見えた。

「刹…刹那!? 大丈夫!?」

刹那は仰向けになって、荒く息をしている。

「ハァ――ハァ――遠…野? ゲホッ――」

咳き込んだと同時に、またも刹那の口から血が出る。
あたしは持っていたタオルで、刹那の口を拭いた。

「あたしが…分かる?」

「分かるよそんなん――ハァ―ハァ――」

苦しそうに顔を歪める刹那を見て、あたしはまた涙を流してしまう。

< 203 / 270 >

この作品をシェア

pagetop