あなたの大切なもの
バチンッ―――!


威勢のいい音が、部屋の中で響く。
あたしは、綾女に顔を叩かれた。
赤く染まる頬を抑え、呆然と綾女を見た。
いーちゃんも、陸斗も、綾女も泣いている。


「…あんたらなんで泣いてんの?」

真っ直ぐ3人を見て、問いかけた。

「百合…?」

「刹那は死んでへんで…? やのにあんたらなんで泣いてんの…?」

「遠野! あいつは死んでん!」

陸斗の言葉で、あたしは耳を押さえる。



「刹那が死ぬはずない! あたしとの『約束』を破って、刹那が死ぬはずないっ!」

「遠野!」



初めて陸斗の大声を聞いた。
< 221 / 270 >

この作品をシェア

pagetop