あなたの大切なもの
「じゃなくて!」

「……へ?」

目をパチクリとさせて驚く義母さん。

「あたしがここへ来たほんまの理由は…刹――」

「ええよ。 分かってる。 刹那のことやろ?」

「………え?」


突然言葉を止められたかと思えば、言わなくちゃならへんことを、先に言われた。


「分かってたよ? 百合ちゃんが来るの」

「分かってたって…?」

「陸斗に言われてん。 『絶対遠野は来るから。 刹那のことで来るから。 遅くなっても来るから、その時は怒らず話聞いたってくれ』ってね」




微笑みながら話す義母さんを、あたしはただ見つめることしか出来なかった。
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