あなたの大切なもの
「あたしたち夫婦の間では…もう口癖になってた。 ”引き取る子は、絶対幸せにしようね”って…。 それで施設に行ったとき、刹那に会った」

「はい………」

「施設に人に聞いたら、生後6ヶ月で預けられたって言ってた」

生後…6ヶ月…?!

「その時もまだ物心もついてない赤ちゃんやったけど、たくさん悲しい思いをしてるんやろなって思ってた。 でも、あたしたちが見た刹那は、誰よりも笑ってた…」

やっぱり…刹那は昔からそうやったんやね。
ずっと笑ってる子やったんやね。

「あたしたちは刹那を引き取って、本当の自分の子供のように育てた…。 本当の子供だって、本気で思ったこともあった。 刹那も、あたしたちを本当の両親だと思ってた…」

そだよね…。
生後6ヶ月から、ずっと一緒だったら、両親だって、思うよね…。

「だけどいつかは、言わんかったらあかん。 やからあたしたちは刹那が中学に入学したとき…本当のことを明かした…」

辛かったよね…苦しかったよね…。
まさか親だと思っていた人が…本当の両親じゃなかったんだから…。

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