あなたの大切なもの
あたしね…正直にいうと、刹那がうらやましい。
あんなにお母さんに愛されて育ったんだもん。

あたしも愛されたかったな…。



家に帰ると、珍しく両親2人共の靴があった。

「ただいま」

いつもは返事もないのに、

「…おかえり」

返ってきた言葉。



びっくりしたあたしは、部屋にいる2人の元へと、早足で進んだ。

「なん……で?」


何でお母さんが言うん?
今まで言ってくれんかったやん。

何でお父さんが言うん?
今まで言ってくれんかったやん。




「ごめんな百合……」

お父さんの口から出た言葉だった。
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