あなたの大切なもの
「何……言って…」

「今まで、勉強のことしか言わんかってごめんな百合…」

何を言って……。


「百合…あんた死のうと思って屋上まで行ったってほんまなん…? 百合の友達っていう霧野君っていう子に聞いてんけど…」


霧野って苗字は……陸斗や。
陸斗がお父さんとお母さんに言って…。


「怒鳴られたの…『遠野があんなにも人に頼られんくなったんは、あんたら親のせいや! あんたらが遠野のことちゃんと考えたらんから、遠野はずっと自分1人で抱え込んどったんやろ!』ってね…」


あのバカ……。
あたしの行く所行く所、先回りして……。


「それ言われて気付いたよ。 父さんらのせいかって…。 ごめんな百合…」

あたし…今日は泣いてばっかや……。
なんでやろ…何で涙は限度っていうもんがないん…?



「ごめんな百合……」

首を横に振った。
< 255 / 270 >

この作品をシェア

pagetop