あなたの大切なもの
「おはよ…何してん?」

「おはよ! 別に何もないよ?」


驚きもせず、焦りもせず、平然といつもと同じ、落ち着いた声で話す良紀。

そうだ…あたしはこの声が好きなんだ。
顔が赤くなるのが分かる。

 
「…そうなん?」

「うん、遠野さんこそどうしたん?」

「別に何もないけど…」

「ふぅん?」


ふわっと風のように笑う良樹。
自然とあたしも、笑顔になる。

< 56 / 270 >

この作品をシェア

pagetop