あなたの大切なもの
猛暑の中で、あたしは走る。
駅に着いたあたしは、ひとまず火照った体を冷やそうと、影の中に入る。

ってか…あいつどこ!?
人呼び出しといて、居らへんやん!
会ったら怒ったるし!

あたしがキレてキョロキョロ見回しとったら、ヒヤリとした物がほっぺに触れた。

「ひゃっ!」

「おっ嬢さ~ん♪ 誰探してんのぉ?」

「もー誰!? ……え?」

…なんで? 何でこいつがこんな所に居るん?
会いたくない。
お願い…あたしの前から消えて…。

「いややなぁ、もう忘れた? 俺の顔☆」

…忘れるわけない。
あんたの顔、喋り方。
……工藤純。
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