夜明け前の桜道

｢…ら｣
遠くから、声が聞こえる。

｢…くら｣
誰だろう…

｢さくら!起きて｣
ハッキリと、耳元に聞こえて来て、ハッと目が覚めた。

目の前には、葵が立っていた。

｢あおい…？｣
寝ぼけ眼で、葵の名前を呼ぶ。

｢うん？…咲良、大丈夫？｣
｢平気よ…着替えるから、先に下へ行ってて…すぐ行くから｣

｢分かった♪｣
パタン…とドアが閉まる音の後に、軽やかに階段を駆け降りて行く音が聞こえて来た。

｢朝から元気ね…、やっぱり雀だったからかしら？｣

ポツリと呟いて、早速着替えを済ますと、階段を降りて挨拶をした…。

｢おはよう｣

いつもの淹れたての珈琲の匂いがリビング中に広がっていた…。