夜明け前の桜道
しばらくして、《ピンポーン》とチャイムが鳴った。

「はぁ〜い……あら、おはよう。ちょっと待ってね」

母が、誰かと会話する声が玄関の方から聞こえてくる。

パタパタ…と、スリッパの音を立ててリビングまで、戻って来た母が一言。

「明徳君と、沙羅ちゃんが待ってるわよ」

その言葉に珈琲を飲んでた私は、思わずむせた。

「ゲホゲホ……えぇ?」
慌てて、鞄を持ってリビングへ向かう。

「…おはよう」
昨日のこともあって、気まずいはずなのに…明徳と沙羅は迎えに来てくれている。

「咲良ちゃん、おはよう」
沙羅は、いつもの笑顔と元気な声で挨拶をしてくる。

何となく、ホッとした私は、明徳を見つめると「……」無言で、そっぽを向いていた。
やっぱり…怒ってるよね…。

しゅんとして俯く私を見て、沙羅は慌てて明徳に言う。

「ほらぁ〜明徳も挨拶!挨拶♪」
肩をぽんぽんと、軽く叩いている。

「…おはよ、昨日は悪かったな」
ボソッと素っ気ない態度だったが、謝ってくれた。

「いいよ…私の方こそ、ごめんね」

「それより、俺が気になるのは……」
と、言いかけて目を丸くしていた。

「どうも♪」
ペコリと、葵は2人に向かって挨拶をしていた。

「葵…」
「おまっ……!!!昨日の…」
指を指して、動揺している。

「月島葵です。昨日から、咲良の家に居候することになりました。」

「あ…、昨日の言ってたことは、本当だったんだ。」
沙羅は、のんびりとした口調で葵を見つめていた。

「お前!図々しいぞ」
「…仕方ないじゃない。」
私は、呆れて溜め息を吐いた。

「寝室は、別なので安心してください」
ニッコリと、悪気のない笑顔で言った。

明徳は、顔を真っ赤にしながら…
「そんなの、当たり前だろ〜!?」


近所中に、明徳の声が響きわたったのは、言うまでもない。
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