夜明け前の桜道
とりあえず、同じクラスになった私達。
皆で素直に喜びを噛み締めていた…


教室に入ると、一斉に注目を浴びたのは葵だった。

怯えるように、不安そうな表情で私を見つめる。

「大丈夫よ…」
ボソッと、耳打ちすると、葵は、コクンと静かに頷く。

「コイツが、来宮の居候か〜?」
もう既に、クラスの皆…いや、全校生徒も知っているんだろう。

心無い中傷が私達の耳に嫌でも入る。
「一緒に住んでるんですって…いやらしいわよね」

ヒソヒソ…と、話声がする…。
私は、唇を噛み締めて、口を開こうとすると…葵がそれを止めるように言った。

「一緒に住んでいて、何が悪いんだ!?…いやらしいって!?…そんなの、考えてる人達の方が…陰でコソコソ言ってる奴の方が、よっぽど、いやらしいと思うよ。これ以上言うと、許さないからなっ!?」


ジロリ…と、皆の顔を睨み付ける。
あっという間に、シーンと静まり返った…。

「はいはーい!そこまで!!」
教室に入って来た、谷口先生は葵の頭をぽんぽんと撫でる。

「お前ら、月島の言う通りだぞ?…ちったぁ仲良くすれよな…」

「…自己紹介するから、皆座れよ」
生徒は、黙って椅子に座った。

「今日から、此処の学校に通うことになった、月島葵君だ。」

「月島葵です…よろしく」
ジロリと、怒った表情のまま睨み付ける。
私は、今まで笑った表情や泣いた表情しか見たことが無かったので、ビクッとしていた…。

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