1と4の捜査
ある家まで来ると、そこの庭にいた黒い犬が、二人を見て、けたたましくほえた。

「うるせー犬っころだ。うー、ワンワンガオーぐるるー」

大人げないけーぶさんが、黒犬に向かって吠えた時、玄関が開き、中年女性が出て来た。

目が合っちゃった天災は、テレが入った。

おばさんは怪しげな目付きだ。

固まってる天災の代わりに花信刑事が

「すいません。警察の者なんですが」

と手帳を呈示した。

するとおばさんは黒犬に向かって

「コーネル マンフレッド ドルリー アーサー ディクスン ウールリッチ、静かにしなさい」

と言うと犬は

「クウーン」

と大人しくなり、その場に伏せた。

それを見た天災

「さすがですなあ。そのコーネルサンダ−マウンテン・・・・・」

「コーネルマンフレッドドルリーアーサーディクスンウールリッチですわ」

「そうそうウールリッチでしたな。ところで三日の事件のことで伺ったのですが、なんか気付いたことはなかったですかね。午後8時前後なんですけど」

「見たわよ私。変な男を」

「え、マジで。ちょ、ちょっと詳しく教えて」

天災警部も手帳を取り出した。

「あの日の8時ちょっと過ぎだったかしら、この」

と犬を横目で指し

「コーネルマンフレッドドルリーアーサーディクスンウールリッチが吠えるものですから、なにごとかと玄関のドアを開け、外を見たんです。そしたら男が歩いていて」

「その男は佐山宅から出て来たんですか」

花信刑事も興味を示す。

「それは解らないけど、でも佐山さんのお宅の方から来たわ。なんだかあわててた」

「顔、覚えてたら、どういう感じだったか教えて下さい」

天災警部は手帳とペンを構え、さらに身を乗り出し、おばさんに、迫った。

「ちょこっと見ただけだからねえ。しかも暗かったし。でも短髪でパーマかけてたかな。それと目付きが鋭かった」

「鼻はどうです」

「鼻は普通ね」

「口はどうです」

「口は普通かしら」

「顔の輪郭は」

「普通だったわよ」

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