逢いたくて



ガサァッ!!!


横の方から音が聞こえた。


茂みの中から立ち上がった紅葉がいた。


その目には涙をたくさん溜め、鼻は赤くなり唇を噛みしめている。


紅葉は俺達を見て、駆けだしてしまった。



俺はどうすることもできずに「紅葉!?」と叫ぶだけだった。


俺の声に驚いた加尾が紅葉を見ていた。



「龍馬さん・・。」

「加尾・・・すまんが・・・。」

「紅葉ちゃんを追ってあげてください。」

「加尾・・・。」

「告白してきた女を振ったんです。紅葉ちゃんを幸せにしてあげないと駄目ですよ。」


俺紅葉を幸せに・・?

紅葉は俺を好いているわけがない。


だけど、今は追うしかない。


紅葉を追わなければ。



「すまん・・・。」

「何度も謝らないで下さい。惨めになりますから。」



加尾は俺の背中を叩いて言う。



「紅葉ちゃんを追ってあげてください!!!」



泣きはらした目で無理に笑って。


俺はそんな加尾の気持ちを無下にすることができなかった。

何よりも俺の心が「紅葉を追え」と言っていた。



俺は紅葉を追って駆けだした。





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