逢いたくて



「龍馬、風邪引くんじゃなかとよ。」

「わぁっとる。」

「龍馬、酒は程々にの。」

「あぁ。」

「龍馬、金の無駄遣いは・・・」

「あー!だー!わぁっちょる!!わぁっちょる!!」


龍馬は頭の上で手を振って人だかりから逃げ出した。

そのまま龍馬はアタシを見つけてニヤリと笑って手を引いた。


「紅葉!!」


楽しそうに笑う龍馬はアタシを連れて走り出した。

走る龍馬の背中を見つめるアタシ。

切なくて胸が痛い。

だって今日は龍馬が旅立つ日。



「紅葉!おまんと話がしたかったぜよ。」

「はいはい。わかったけど、時間に間に合うの?」

「多少遅れたって構わん。」


龍馬は笑って汗を拭く。


「全く、迷惑をかけちゃ駄目でしょ。」

「おまんまで言うか!?」

「で?何?」


龍馬は少し照れくさそうに頬を掻く。


「いやー何っちゅー事でもないんじゃがの・・・。」

「変な人。」


「ただ、出発前におまんと話したかっただけじゃ。」



龍馬はアタシを抱きしめて呟いた。





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