逢いたくて
「おまん、浮気はするなよ。」
「はいはい。」
「武市さんには惚れるなよ。」
「大丈夫だって。龍馬こそ、吉原に行って綺麗なお姉さんに惚れたりしないでよ?」
「大丈夫じゃ、吉原に行っても惚れたりはしない。」
「吉原に行くの!?」
「冗談じゃ・・・。」
龍馬はそのままアタシに口づけする。
少し長い沈黙のあとやっと唇が離れる。
「心配じゃ、おまんを置いていけん。」
「馬鹿、男なら行ってきてよ。」
「おまんじゃ心配じゃ。好きな分だけ心配じゃ。」
「アタシだってそうだよ、好き過ぎて心配なんだ。」
「気をつけてね。」
龍馬は「あぁ」と呟いてまた口づける。
龍馬の唇、吐息。
大きな体に長いまつげ。
柔らかい髪と綺麗な指。
この目に焼き付けておこう。
絶対に、そう絶対に焼き付けておきたい。
もう二度と逢えなくなるわけではないのに。
永久の別れのように感じた。