逢いたくて
新しい出逢い

1.憧れの




「なぁ…紅葉…。」


嫌に思い詰めた龍馬がアタシを呼んだ。

ザザァン……ザザ…ザザァ…ン


波の音だけが2人の間に流れた。


「なに?龍馬?」


龍馬が帰ってきてから半年。

いつも何気ない毎日を過ごしていたのに、今日突然龍馬に呼び出された。


「わしは一体どうしたらええがじゃろ…。」

「どうしたの?」

「紅葉……。」


龍馬はそう言って横に座るアタシを抱きしめた。


「龍馬…落ち着いて?」

「紅葉……。」


いつの間にかアタシの肩は龍馬の涙で濡れていた。

聞こえるのは静かな風と波の音。

それにすぐ近くで聞こえる龍馬の啜り泣き。


いつだって笑顔の龍馬。

どんなときも強がってアタシを助けてくれた龍馬が今アタシの胸で泣いている。

どんな理由があるのかはわからないけれど、肩を濡らす涙と龍馬の嗚咽が痛々しい。


「紅葉…。」


やっと龍馬が口を開いた。



「わしは…土佐を出る…。」





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