トリックス☆スターズ

20.印

クリーダの付けた印をスフェーンに見られてしまった。

スフェーンは目を見開き呆然とした顔でそれらを見つめ、震える手で印の正体を確かめる様に触れている。

「いやらしい、信じられない」

どんなあたしを望んでいたのか知らないけど、スフェーンの理想である必要なんて全くないじゃないか。
何も知らないくせに勝手な評価をされて、あたしはちょっと腹が立った。

『信じてなんてくれなくていいよ、
 あたしはスフェーンがどう思おうと自分で考えて自分で行動するんだから』

そう言ったとたん、スフェーンがギュッとつねった。

『イタッ!何すんのよッ!』

「これ付けたのってあのクリーダって人なんでしょう?」

スフェーンは凄く落ち着いた声で聞いたよ。
その返事をあたしは少し考えていた、クリーダを巻き込みたくなかったからね。
でも、この際だからハッキリとさせようと思って言ったんだ。

『うん』

「いつからなの?」

そう聞かれてあたしはビックリした、一昨日からだって事にね。だってすっごく前な様な気がしてたから。
一昨日までそういう対象と思ってなかったクリーダを、今は大事にしたいと思ってる事にも驚けた。

『一昨日から』

「そんな…たったそれだけで」

スフェーンはガクッとあたしの上にうな垂れ、その拍子に結んでいた長い髪がほどけてパサッと落ちた。
やわらかい髪があたしの体に広がり、少しくすぐったい。

「全部食いちぎってやる」

そう聞こえた次の瞬間、胸に激痛が走った。

『うぎゃーーーーッ!!!』

スフェーンがあたしに噛み付いたんだ。
たまらずあたしは逃げようとしたけど、強い力で押さえ込まれて動けなかった。

『やめてッ!イタイッ!!!』

余りの痛みにスフェーンをバシッと殴ったらやっと離してくれた。

「ほら、あたしも付けられたよ」

スフェーンが噛み付いた所が真っ赤になって、点々と血が出て来ているのが見えた。
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