トリックス☆スターズ
「せっかくだけど…」

シンナバーはそう言うと、スフェーンの前に立ってその頬を思い切り叩いたんだ。ビックリする程の音がしたよ。
スフェーンはそのまま倒れ、更に1回転して転がってた。手加減なしで本気で殴ったんだね。

「スフェーン!!ずっと我慢してたけど今日は言わせてもらうからッ!
 今回の仕事を最後にペアを解消させてもらうよ」

「んなッ!?」

シンナバーは唐突に叩かれた事より、衝撃的な事を言われた事でどうしていいか分からない様子だ。
その頬には見事な手形が付いてた、こんな見事な手形が付いたのをあたしは見た事ない。それをスフェーンは手で押さえる事すらしなかった。

「いきなり何って顔ね?それじゃ説明してあげる」

スフェーンは呆然とした表情で、ぺたんと座ったままシンナバーを見つめていた。

「あたしは昔から強いスフェーンに憧れてたの、ずっと小さな頃からね
 今だから言うけど、本当はあたし、魔法学校じゃなくこの町の教会に入るはずだったのよ、
 スフェーンと同じ学校に入る為に父を半年間毎日説得して、やっと魔法学校に入る事を許された時はそれはそれは嬉しかったわぁ」

そっか、シンナバーって何で魔法学校に入ったんだろ?って思ってたけど、スフェーンと離れたくなかったからなんだ。
ナボラの教会に入ったら、滅多に会う事も出来なくなるからね。

「晴れて魔法学校へ入学して、さぁこれからって思ってたらいきなりスフェーンはおチビに夢中になってるし…
 でもスフェーンが望むことならって思って我慢したんだッ!
 スフェーンがおチビを抱いたって聞いた時だって卒倒したけど我慢したんだよッ!」

『あわッ!』

こらーーーッ!クリーダの前で何言っちゃってくれてんの!?
あたしはゆっくりと視線をクリーダに向けてみた、クリーダは腕組みしてすっごい不満げな顔であたしを見ていたよ。

「聞いてよッ!あたしはスフェーンが学校一の実力を認められた時なんてこう思ったんだよッ!
 ”あぁ、あたしのスフェーンが遂にやってくれたッ!”ってね!!
 じゃぁあんたの大好きなおチビはその時どう思ってくれたのッ!?喜んでくれたっていうの!?」
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