トリックス☆スターズ
あたしはヘリオを気にせず、小細工魔法をテントの骨組みにかけてスルスルと抜き始めた。思ったより骨組みの本数が多い、これならヘリオの剣を直せるかもしれないな。

「ちゃんと聞いてくれ」

ヘリオはあたし前に回ると、あたしの両肩を掴んで真顔でそう言ったんだ。

『ちゃんと聞いてるよ、車両の話はウソでも鉄があった事は本当だったんにゃん』

「いや、そうじゃなくて、ここにお前を誘った理由をだな…」

『ふむ、じゃぁその理由を言ってみるんにゃん』

「もう分かってるかもしれないが、
 オレはお前を昨日見た瞬間に一目惚れしてしまったんだ、それをちゃんと伝えたかった」

それから、あたしとヘリオは黙ったまま少し時間が過ぎていった。静かな林の中から聞こえる鳥の囀りだけが音を発していると言う不思議な時間だ。
一目惚れって多分好きって事で間違いないんだろうけど、何かあたしにはピンと来ないものなんだ。
「過去にこういう事がありました」って報告された様で、へぇーとは思うけどさ。多分あたしの経験不足が原因だろうけど、現在進行形どうなのかが釈然としない。

『そうか』

「そうだ」

『じゃぁ、その剣を下に置くんにゃん』

「ダァァァァーーカラッ!この剣はもういいんだよ
 オレのカミングアウトを聞いてなかったのか!」

『それはそれ、これはこれ
 あたしは一度受けた事は放り出したくないんだ
 だから先にその剣を直したいんにゃん』

ヘリオは暫くあたしの目を見ていたけど、やがて黙って剣を地面に差し出した。
剣が置かれた後、あたしは骨組みをつかんでは投げる動きと共に小細工魔法を使った。あたしの横に寄せ集められたテントの骨組みが剣に吸収されて行くと、半分になった剣の先が少しづつ生えて行き、骨組みを使い切る直前に剣は元通りの長さになった。
その後で、硬度を出す為テントの布を燃やして炭を作って、それを剣に吸収させてやる。
ヘリオの両手剣の表面は黒光りし、剣独特の緊張した美しい光の反射を見せていた。
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