トリックス☆スターズ
『それにしても、何でヘリオなのかんにゃん』

「さぁ、もしかしたらわたし達が知らないだけで、他の組合員にも渡される予定なのかもしれませんよ?」

『だとしたら悔しいんにゃん、軍め・・あたし達をナメやがってッ!』

「ふふ、さて…」

『うん?』

「お風呂でゆっくりしてきましょうか」

『まだ大分早いけど行くのかんにゃん』

「早い時間だからいいのですよ、今なら貸切りだと思いますから」

『おーッ!それはいい案だんにゃん!』

と言う事で、あたし達は少し早めのお風呂に向かったんだ。
お風呂屋さんはさっき行った繁華街のすぐ近くにある、大きな煙突があるからすぐ分かったんだ。
いやぁ、まだ日が沈んでいない時間からお風呂って何か贅沢でいいねぇー。
クリーダの言うとおり、まだ他のお客は来てなかったよ。予定通りにあたし達の貸切り状態だ。

「あ、待ってください」

脱衣所であたしがズバーっと服を脱ごうとしたら待ったがかかった。

『わたしがやります』

クリーダは丁寧にやさしく一枚っつ脱いではカゴに畳んで入れてくれたんだ。
そうしてもらったら、もちろんあたしもお返しをしてあげなきゃね。
番台にはおじいさんが居るけど、こういうやり取りをしてても全く気にしないのは流石だ。
お風呂屋さんの大きな湯船の奥の壁には、見たことのない美しい大きな山の絵が描いてあった。山の裾が左右に美しく広がり、その山の中腹から上にに雪が積もっている。

そして、この湯船に浸かって出た言葉はどういう訳か

『ふぅー、極楽極楽ぅ』

だった。
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