トリックス☆スターズ
そして、クリーダはあたしを確かめるように手を這わせ、背中に手を回したらギュっとしてくれたんだ。
ギュっていいなぁ、これってするのもされるのも大好きなんだ。心地よい安心感がするんだよ。
あたしもクリーダの背中に手を回してみた、彼女の背中は思ったよりずっと小さくて華奢だった。
指で背中の薄い肉の下にある骨の感触や、肩の骨格を確かめる。それは雑に扱ったら壊れてしまいそうな繊細さなんだ。
身長はあたしより10cmは高いのに、こんなにも弱弱しかったんだ。
世間で言う所の「守ってあげたい」って思わせるタイプには間違いないんだろうな。

でも、クリーダはあたしと仲良くなりたいって思って、1年近くかけてそれを実現させようとしてる。
欲しいものは手に入れたくなるなんて弱い人間なら言いそうもないし、本当のクリーダってやっぱり強いんだろうか。

思った事を実現させられるなんて凄いなぁ、偉いなぁ。

そこへ行くとあたしはどうだろう、何を目的に魔戦士組合に入たのかすらハッキリ言えるものがないんだ。
ただ、入ったら何かが変わりそうな気がしたんだよ。何か見つかるんじゃないかって思ったんだよ。
クリーダが魔戦士組合に入ったのって、やっぱりあたしが入ろうとしたからなんだろうか。それともあたしと一緒に行動したくてチラシを入れたのかな?
もし、クリーダが目的を完全に果たした後どうするのかな?目的を達成したら「ハイ次」ってなっちゃうのかな?それとも、ずっとあたしと一緒に居たいとか思うのかな?

あたしから興味を失ったりしたらちょっとイヤかもしれない。

「ふふっ、やっとドキドキしてくれましたね」

少し不安を感じたからかな、何だか急にドキドキして来たみたいだ。

『あ…』

「不安を感じてくれたんですね?…うれしい」

そっか、クリーダも少しは不安に思っていたんだろうね。
それってどんな不安だったのかな?あたしに拒否される事への不安だったのかな?

そう思われてたならちょっと嬉しい、あたしは何だかクリーダがだんだん愛おしいく思えて来たんだ。
きっと今までは見た目だけで見ていたんだね、感情に届くものが出来ると全く感覚が変わってくるって今知ったよ。

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