@名もなき冒険者
今日は早めに食事をして寝よう。

粗末なパンは、薄い塩味のするかた焼きの黒パン。

保存食にもなるので重宝され、ちぎると言うより割って食べるんだけど、水やミルクに浸すとやらかくなって食べやすい。

チーズとかハムにはよく合うらしい、もちろんハムは今は食べれないけど。

寺院の食事はいつも「パンとチーズと水またはミルク」に決まってた。

あ、そういえばみんなで畑の野菜を収穫したり、山で山菜を摘んだこともあったっけ。


懐かしむように目を閉じてはみるものの、まだ懐かしい程は経っていない新しい記憶だ。


モーグリは空中に浮かんだまま、だまってわたしを見ていた。


「モーグ」

『なにクポ?』

「その頭の…」

『こ!コレは!食べ物じゃないクポ!
 中にはきっと毒が入ってると思うクポ!
 だから食べたら死んじゃうクポ!』


そう言って頭のオレンジの様なものを押さえ、首をフルフルした。


言いかけた途中でこれ程反応する所を見ると、モーグリ界でもメジャーな話なのだろう。

レンタハウスには、書斎机、キャビネット、暖炉、それと灯りしかなかった。

ベッドはない、毛布はキャビネットの中に入っていたけど。


床に寝るのは嫌だし、机の上を片付けてそこで寝よう。


「じゃ、おやすみモーグ」

『ご主人さま、おやすみなさいクポ』


そういって机の上で丸くなると、モーグは照明を落としてくれた。
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