擬似レンアイ。
……そして、ほら。
此処にもそんな彼に心を奪われた、沢山の女の子達が。
「キャー真白さんだ!」
「え?あっ本当だ!」
「真白さん、今日も格好良いっ」
何人かの女の子のはしゃぐ声に連られて、どんどんと目の前に溢れ出てくる人波。
それと共に段々大きくなっていく女の子特有の甲高い声に、思わず耳を塞ぎたくなる。
……まぁ、一ヶ月前までは、私もこうだったんだけど。
今思えばとても哀しくて、なんだか虚しい気持ちになってくるっていうか、なんというか。
「真白さぁ~ん!」
ほんの数分で塞がれた、目の前の廊下の道。
――これじゃあ、前に進めない。
どうしよう。
"こんな"時こそ、私がどうにかしなくちゃいけないのに……。
「――…はぁ」
突然真上から聞こえた、小さな溜め息。
それと共に、大きな手の平に包まれた、私の手首。