擬似レンアイ。
――――――――……
「あ、真白だ~。伊織ちゃんも!」
あれから数分歩き続け…
私達が普段勉強する教室から少し離れた所にある、"特別教室"の扉を開けると、
大きなソファで寛いでいる一人の男子生徒がいた。
男子生徒は私達を見つけると身体を起こし、無邪気な笑顔で手を振ってくる。
「あっ本条くん、こんにちは」
慌てて頭を下げた私に、男子生徒…本条飛鳥(ホンジョウ アスカ)くんは、軽く苦笑を浮かべた。
「伊織ちゃん、そんなに堅くなんなくて良いのに~。いい加減慣れよ、ね?」
「は、はい…」
こんな状況、慣れるわけ無いじゃん……。
私は小さく溜め息を吐いたあと、「お茶入れますね」と、ポットの側へと脚を進める。
――今私達が居る、特別教室。
他の教室とは違う、教室の造りに、床にひかれた真っ赤な絨毯。
高級そうな低いテーブルとソファーに、
棚にはなんだか良く分からない動物の置物が幾つか並べてあって。
……これも、きっと高級物なんだと思う。
そして、教室の奥には大きな机と、坐り心地の良さそうな、フカフカな椅子。
まるで校長室のような、この教室の正体は――…