世界で1番愛してる
私が買ってきた本を真剣に読む涼太の横顔を見ていた。
何も変わらない。
髪は伸びて多少逆プリンになってるけど…後は何も変わらない。
左手首に付けた時計を見た。
午後3時。
「涼太……リョウ?」
「…んぁ?」
「ちょっとトイレ行ってくるから。」
ごめんね、嘘を付いて。
トイレなんか行かないけど病室を出るこじつけにはなるでしょう?
なんの疑いもなく送り出してくれる涼太に胸が痛んだ。
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病室を出て3階へ行く。
エレベーターホールの隅にはママが待っていてくれた。
「ママ、遅くなっちゃった?」
「大丈夫よ。―…行きましょうか。」
目指すは先生がいる医局。
3時過ぎには結果が出てるからって言われて、ママと二人で聞きに行く。
本当はママだけで行くんだったけど、私が無理を言って連れて行ってもらってる。
どうしても聞きたかった。
後からママや先生の口から聞いたら多分堪えられないから。
「杉村さん、こちらにどうぞ。」
医局を覗けばレントゲンと睨めっこしている涼太の担当の河原先生。
ママに気づいてすぐに連れていかれたカンファレンス室。
私には、どうしてもトンネルの入口にしか見えなかった。