世界で1番愛してる
それからの私は何をするにしても涼太の事を考えるようになってしまった。
学校に居ても、買い物に行っても、家に居ても…。
――…涼太ならこうするだろうな、
とか色々考えてしまう。
買い物袋の中には蜜柑と林檎。
白い道を抜けて辿り着く先は、私の愛する人のもと。
「涼太ー、元気?」
「おー、元気元気……ってシズ昨日もきただろ。」
ドアを開けて、そう問い掛けるのが私の日課になっている。
抗がん剤治療を始めて一週間、特にこれと言う変化は私には見られない。
もしかしたら、このまま何もなく過ごせるかも…。
なんて希望すら大きくなる。
「蜜柑と林檎買ってきた!涼太は林檎好きでしょ?」
「で、蜜柑はシズの?お前は蜜柑大好きだもんなー。」
他愛もない話しで笑い合える幸せが今目の前にある。
それが何よりも嬉しいんだ。
「蜜柑美味しいじゃん。でも林檎はなんか…」
「林檎のがうまいじゃん。」
「美味しいけどさ……あの…かじった時のシャリシャリ感がどうも…。こうゾワってする。」
身振り手振りで説明する私を笑いながら見てる涼太。
林檎は嫌いじゃないけど、どうも苦手。シャリって感じが好きになれない。
そう言えば、それがいいんだろって涼太にいつも言われちゃうけど。
「食べる?食べるなら剥くよ?」
「…今は良いわ。ごめんな?」
申し訳なさそうな涼太に笑って頭を振る。
副作用で吐いたりとかは今はないけど、私から見ても涼太は食欲が落ちていた。
抗がん剤を始める前よりも痩せた、と言うか窶れた、と言うのが正しいのかな。