世界で1番愛してる
第四部
我儘
涼太が入院して一ヶ月。
治療を始めてからはもうすぐで二週間が過ぎる。
「なぁなぁ、シズー」
「ん?…あっ、ちょっと涼太!針ずれるから動かないの!」
「あ?…大丈夫だって!それよりさー…」
相変わらず私たちは一緒にいる。
私は昼間はちゃんと学校に行って、終わればすぐに病院に来て涼太に会う。
それが当たり前の日々。
今日は土曜で学校も休み。
朝から涼太のとこに来たは良いけど、病人であるはずの涼太はベッドで大人しく…
……なんてするはずないよね。
「なぁなぁ…、これよくね?」
一冊の雑誌、先週に私が買ってきた情報誌の一ページを私に見せながら満面の笑顔。
「ん?ここって…向日葵畑だよ。ほら、前に行ったとこ。」
「あー、だから見覚えあるんだな。行きてーなー……」
付き合い始めてすぐに一緒に行った向日葵畑。
実はそこが私と涼太の初デートの場所だったりもする。
「行ったって向日葵ないでしょ…今はただの草っぱらなんじゃないかなぁ…。」
「いやいや、草っぱらも捨てたもんじゃねぇからな?」
いや、意味わかんないからね。
草っぱらを見て何が楽しいのかは私には理解できないけど、涼太はものすごく行きたそうな表情で雑誌とにらめっこしている。
「行けねぇかな。」
「……んー…河内先生が良いって言えば行けるかも?」
嘘。行けないよ。
今の涼太は外には出れない。
抗がん剤で体力も免疫も落ちてるから少しの細菌でも命取りになるって…ついこの間、河内先生が言ってた。
「マジ?センセー来たら聞いてみるかー。」
「―――…そうだね…。」
でも、それを涼太は知らない。
抗がん剤で苦しい思いしながら頑張ってるのに…
良くなるどころか癌は広がる一方…悪くなってるなんて、私には言えなかった。