世界で1番愛してる
向日葵
「良いかい?必ず昼食を食べてこれを飲む。マスクは外さない。わかったかい?」
「センセー、それ何回目だよ…耳にタコできるっつーの。」
涼太が外出をしたいと言ってから三日。
多少の吐き気はあっても熱は出なかった涼太に外出のお許しが出たのは今日。
私は今日だけは学校を休んで朝から涼太に会いにきていた。
「ふふ……先生、お父さんみたい。」
朝から何回…いや、何十回も同じ事を言う河内先生に涼太はげんなりしていたけれど。
私はそれが微笑ましかった。
先生が涼太のお父さんで、涼太は反抗期の息子。
そう見えていた。
「こんな親父イヤダ…」
「……涼太くん。君は門限まで付けられたいかな?」
「うそ!うそうそ!!
あー、こんな親父だったら嬉しいのになー!」
河内先生の脅しもどきに屈した涼太は慌てて、それでも棒読みにそう言うから余計に笑いが止まらなかった。
「…ほら、行きなさい。時間がなくなってしまうよ?」
「そりゃマズイな…ほら、シズ行くぞ!」
「うん!先生、行ってきます!」
「気をつけるんだよ?」
優しく見送ってくれる先生に手を振って、涼太と手を繋ぐ。
涼太と手を繋ぐの何時ぶりだろう…。
ただ涼太と少しデートできるってだけで、私は嬉しかった。
今度はいつデートできるかなんてわからない。
だから今日を一杯楽しむんだって、昨日涼太とも約束していた。