世界で1番愛してる
世界で1番愛する君へ
涼太が覚めない眠りに付いてから、あっという間だった。
お通夜もお葬式も、たくさんの人が来た。
シゲくんも、愛ちゃんも。
ほかにもたくさんの涼太の友達がきて、涼太の為に泣いていた。
それでも私は泣かなかった。
違うね。
泣けなかったんだと思う。
涼太はもういないって頭ではわかったつもりでも、どこかでまたいつもみたいに笑って、
おはよう
って言うんじゃないかって、そう思いたかったのかもしれない。
「シズ、ありがとうね。手伝ってくれて。」
「ううん。私がやりたくて手伝ったんだから。」
ママはあの時以来泣いてない。
それでも目が真っ赤で泣くのを我慢してるのはわかった。
葬儀も終わって、涼太の家に戻ってきた私とママは涼太の部屋の入口に立って部屋の中を見ていた。
「……これね、涼太から。」
ママの震える手に握られていたのは飾り気なんてない茶封筒。
それを渡されて、私は封筒とママを交互にみた。
「あずかったのよ。涼太から。……全部終わったらシズに渡してほしいって。」
ただそれだけを言ってママは自分の部屋へ行ってしまった。
涼太の部屋に入ってドアを閉める。
涼太の部屋は片付けるのが好きじゃない…いや、嫌いな涼太らしく汚いまま。
雑誌や漫画はそこら辺に散らばってるし、いつ着たかわからない洋服だって脱ぎっぱなしで放置。
あまりにも涼太らしすぎてわらってしまった。