Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 夕方近くの柔らかい陽の光の中。

 木漏れ日が差す並木道を、日陰を探しながら僕は歩く。

 殺人事件が起きた、体育倉庫に向かって。

 この殺人事件の犯人も、あの男だと踏んで、間違いないだろう。

 そして、多分、三日前に住宅街で感じた、怪しい視線も。

 本当は、完全な日暮れを待って、動いた方が良かったけれど、気が急いて、じっとしてなんかいられなかった。

 昨日の「赤髪の男」の正体をどうしても知りたかったのだ。

 事件の巻き添えをくった養護教諭は、意識不明の重体ながらも、生き伸びた。

 僕も松嶋に、問答無用と救急車に放り込まれた。

 さすがに、月光を浴びれば元に戻るとも言えず、行った先の病院で、肩を20針以上縫われた。

 それでも、騒ぎの規模としては、驚くほど被害が少なかったと言っていい、と思う。
< 101 / 298 >

この作品をシェア

pagetop