Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 刑事二人が飲み込まれた時のことも、思い出してみる。

 そういえば、最初に引きずりこんだ時に比べて、次の方の手がひどく傷んでいるような気がした。

 見たときは、最初の刑事が暴れたからかとも思ったが、そんな暇なんかは無かった。

 そもそも、あんな勢いで、土堀りができる手が、人間相手にそうやすやすと傷つく事は無い……





 ……そうか。



 僕は、金属バットをぽい、と放り投げると、今度はシャベルを手に取った。

「ちょっと、化け物退治に行って来る。
 僕があいつを足止めできたら、凛花は扉……いや、窓からがいいか。
 とにかく逃げろ。
 それからまっすぐ職員室に向かって、人間を大勢呼んできて。
 ……できる?
 一人で走る事になるけれど……」

「うん」

 僕の言葉に、凛花は、口の端を持ち上げた。

 強張ってはいるが、ちゃんと微笑んで見える。

「できるわ。逃げ道は二つもあるんだもの。化け物が居ないほうを選べばいいのよね」

 良い瞳をしている。

 かえす言葉も、気丈だ。

 僕は、自然と微笑んでいた。

「大丈夫。僕が絶対、お前の方に化け物は行かせない」

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