Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 


 注意深く扉を開けると、西日が差し込んだ。

 土山は、コンクリートで固めてある軒下直前まで迫っている。

 倉庫の扉が開いたのを感じて、土の山の一部が少し崩れた。



 ……来る!



 がんっ!




 いきなり伸びて来た手を、僕は、シャベルではじく。



 びゆっ!



 なぎ払われた手は、速やかに土山に引っ込んだ。

 まるで、一秒でも陽の光に当たりたくないとでもいうように。

 よし。

 こっちは行けそうだ。

「先生!」

「大丈夫」

 悲鳴じみた、凛花の声を受け流す。

 大丈夫。遅い。

 腕は、莫迦みたいに長いが、一回でシャベルが壊れない所をみると、そんなに怖い奴でもない。

 さすがに、爪無しの素手で、攻撃を受ける気はないが。

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