Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 僕は……きちんと……調べた。

「体育倉庫の床に……吸血鬼の輪は……無かった」

 ……はずだ……

 僕の戸惑いを、赤髪が耳元でげらげらと笑い飛ばした。

「キサマが出来る事は、オレにだって出来んだよ!
 なにせ、オレ様は、吸血鬼を超えた存在だからな」

「そうか。……窓か。窓を一つ異空間につなげたな……」

 そう。

 凛花は、倉庫からの逃げ道が二つ、と言っていた。

 僕はその時、窓と扉の二つだと思っていた。

 しかし、凛花の……人間の目には、三つある窓のうち、二つしか、見えなかったとしたら。

 残りの一つの窓をを吸血鬼の輪にして、ねぐらにつなげていたんだ。

「さすがに、察しはいいな、皇子サマ、って……クソ!」

 赤髪がカタっている途中で、僕に踏みつけられたままの土山の化け物が、自由な手を振り回した。

 それが、赤髪の視界を遮ったのだ。

「良いところで邪魔するな!
 この、出来損ない!」

 赤髪は、僕からシャベルをもぎ取ると、土山の化け物に向かって投げた。

 狙いは外れず、陽の光でぼろぼろになった奴の胸の真ん中に刺さった。
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