Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 

 びりびりびりびり……


 遮光性の布は、あっけなく、紙のように裂けた。

 夕暮れの弱い光にでさえ、僕の肌が微かに焼ける。

 土山の化け物よりは強いものの、日光は僕の身体を傷つけるのだ。

 むき出しになった左肩を見て、赤髪が舌打ちをする。

「昨日、オレがつけてやった印を、一晩で治しやがって……一生残る傷をつけてやったつもりなのに、もう跡形も無い」

 ぐい。

 昨日の傷の部分を探すように、なぞるように、爪を突き立てると僕の肩を引き裂いてゆく。

 ………っ……!

 痛い……!

 思わずもれそうになる呻き声を。

 つきそうになる膝をこらえて、僕はただ睨む。

 赤髪は、僕からもぎ取った肉片を美味そうに、咀嚼した。

「吸血鬼は、月の光にあたれば傷が癒える。
 死ぬ寸前までだったら、いくら食っても元に戻るって言う事だな。
 ……どれくらいまで、キサマがモつか、試してやろうか。
 何度も食っては戻す事を繰返せば、相当、食べでがあるぞ。
 それとも……」

 赤髪は、卑しい嘲笑を浮かべた。



 
 
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