Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 しかし。

 ここに来てようやく、凛花は、広い校庭を走りきり、たった今、僕の視界から消えた。

 赤髪は、首と、急所を文字通り手に入れ、完全に僕の動きを封じたと思っている。

 それを感じたとたん。

 ヤツに向かって、僕は、いきなりもう一つの「手」を開放した。



 めきめきめき!


 軽い痛みとともに、僕の背中に皮膜の翼が出現する。

 僕を後ろから抱いていた赤髪を、翼の端の鋭いかぎ爪が引き裂いた。



 うああああ……っ!




 赤髪は、顔を抑えてのけぞった。

「目が……オレ様の目がぁ……!」

 男は、僕を地面に叩きつけるように放すと、地面を転げまわる。

  ……はずしたか。

 本当は、右目の他に咽を狙ったはずだった。


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