Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 だが。

 左肩は赤髪の爪で破壊されていた。

 傷ついた肩から生えた左翼のかぎ爪は、ヤツを仕留めるほどの力が出なかったのだ。

 無事だった方の右翼だけが、正確に赤髪の目を貫いた。

 僕は、失血のために重くなった身体を引きずるようにして立ち上がると、両手の爪を長く伸ばして、身構えた。

 ……早く決着をつけなければ、人が来る。

 翼と爪の生えたこの身を、大勢の人目にさらすわけにはいかなかった。




 ひゅ……っ!



 僕は、息を整えると、地面ぎりぎりを飛ぶように走った。

 不意打ちがよほど効いたのか、まだ顔を押さえている赤髪を倒そうと、一気に間合いをつめる。



 だが、しかし。



 僕が、爪の生えた手を振りかぶって、赤髪を攻撃しようと思った瞬間。

 行く手を阻むものが出現した。

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