Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 そんな事をしなくても。

 どっちにしろ、僕自身だって赤髪の後を追えるほどの力は、もはや無い。

 昨日と今日、二日続けて血を流しすぎた。

 ふらつく身体を励まして、敵を睨む。

 目の前には、土山がいくつも迫り、陽も急速に翳って来た。

 もうすぐ、人間も大勢やってくるだろう。

 人間は、人の身であったなら助けでも、この姿で出会ったならば、狩られかねない。

 全ての罪を着せられて。


 僕は、土山を見据えながら、じりじりと後ろに下がる。





 そして。

 素早く身をひるがえすと、体育倉庫に飛びこんだ。

 それは。

 目の端に、僕が凛花の姿を捉えたのと、ほぼ同時だった。



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