Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「死」という言葉が、ふと、心によぎる。

 僕は、ここで生きる事をやめるのか、と。

 このまま、何もせず、血を流れるままにして、月の光にあたらなければ。

 いや、そこまで待たずとも、止血をして積極的に生きようと努力しなければ僕は死ぬ。





 ……死ねる。





 僕はもう、何百年も生きてきた。

 先に逝く人間達を見送りながら。

 その中には、敵がいた。

 仲間、と呼べる人々もいた。

 指の間から砂のようにすり抜ける命を惜しんで、叫んだ事もあった。

 しかし「時間」は無常にも人間達を「寿命」という死の淵に追いやり……





 ……僕だけがいつも闇より深い孤独の中にいた……




 もし、このまま無駄に時間を重ねるだけの「生」ならば。

 いっそこのまま終わってみても、小気味良いかもしれなかった。
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