Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 敵……?

 松嶋も敵なのか?

 だとしても、もう。

 僕には、何も出来なかった。

 爪も翼も、新たに出すことさえもできない。

 気を失わないようにしているのが精一杯だった。

 松嶋は、険しい顔で、僕につかみかかると、乱暴に揺すって怒鳴る。

「あんたは……!」

「松嶋先生ぇ……!
 扉を開けるなら、鍵よりも、バールでこじ開けた方がいいって、 刑事さんが……
 あ、開いてる!」


 ……凛花だ!

 凛花が、大分早く戻って来たんだ。

 体育倉庫が開いているのを見て、びっくりしたように、入って来る。

 松嶋は、小さく舌打ちすると、怒りの形相を、すっと収めて、凛花に振り返った。

 あまりの切り替えの速さに、仮面の付け替えを見ているようだった。

「すまん。ポケットを探ったら、鍵が出てきた。
ダメもとで開けてみたら開いたんだ」

 ……ウソをつけ。

 僕は心のなかで毒づいた。

 あのタイミングだったら、ぜったい鍵を持っていることを知っていた。

 凛花を……周りの人間を遠ざけて、僕の息の音をこっそり止めるつもりだったのか。

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